2020.02.21
ハービー・ハンコック公演メンバー決定!!&原田和典氏特別寄稿
5/23(土)と5/24(日)2夜連続出演するハービー・ハンコック。その両公演のメンバーが決定いたしました!
昨今のハービー・ハンコックバンドに欠かせない、ベーシストジェームス・ジーナス、ギタリストリオーネル・ルエケ、キーボード&サックステラス・マーティンに加え、スナーキー・パピーやクリスチャン・スコットらも厚い信頼を寄せる今大注目のフルート奏者エレーナ・ピンダーヒューズ、そしてロバート・グラスパーなど数々のアーティストと活動する凄腕ドラマージャスティン・タイソンが出演決定!
さらに、音楽評論家の原田和典さんに本公演の見どころについて寄稿いただきました。
いかなるときも次世代に注目し、起用し、存分に羽を伸ばす場を与え、だけどおいしいところはしっかりガッチリ持っていき“さすがの巨匠ぶり”を見せつける・・・それが筆者のハービー・ハンコックに対するイメージである。なんだかんだいっても手綱を握っているのは豊富すぎるほどのキャリアの持ち主である彼なのだ。
だが今回の共演メンバーを参照すると“決してそうはいかないかも”と感じる。見れば見るほど、バンド・メンバーの精鋭気鋭たちとハービーが世代を超えて刺激を与えあい、煽りあう図が脳内に浮かんでくる。誰が最大の喝采をさらってもおかしくない。とりわけ鮮烈なのがフルート奏者エレーナ・ピンダーヒューズの起用だ。ところで最近のジャズ界には“楽器ルネッサンス”が著しい。そんな言葉きいたことないぞ、といわれそうだが、ここしばらく脚光を浴びていなかった楽器が華やかな逸材の手でシーンの最前線に躍り出る現象を個人的にはこう呼んでいる。ヴィブラフォンのジョエル・ロス、バリトン・サックスのレオP、ハープのブランディ・ヤンガー、チューバのテオン・クロスらと共に、彼女はその中心に位置するひとりといっていいだろう。ハービーはマイルス・デイヴィスのバンドを1968年に脱退して以来、数々のリーダー・バンドを率いたけれど、フルート専業ミュージシャンを迎えるのはこれが初めてのはず。クリスチャン・スコット、スナーキー・パピー、キャンディス・スプリングスらと実りある活動を続けてきたエレーナの変幻自在の吹奏がハービーの楽曲にどんな新たな色彩を加え、それを受けて立つハービーがいかにしてフレッシュな即興を繰り広げてゆくか。もう、わくわくするしかない。
古くはトニー・ウィリアムス、ハーヴィー・メイソン、比較的近年ではヴィニー・カリウタといった最強ドラマーと組んできたハービーが今回、白羽の矢を立てたのはジャスティン・タイソン。今のジャズ界にはジャスティン・フォークナー(カート・ローゼンウィンケルらと共演)、ジャスティン・ブラウン(ホセ・ジェイムズのバンドで2月に来日)、ジャスティン・タイソンと凄腕ドラマーが3人もいて、自分は“3大ジャスティン”と呼んでいるのだが、エスペランサのバンドやロバート・グラスパー・エクスペリメントでも活動してきたタイソンの太い音色で鋭く切り込むドラム・ワークがソリストやアンサンブルに与える刺激は無限といったところ。好奇心いっぱいのハービーのことだから、「エスペランサやグラスパーの時以上に、自由奔放に、予想もつかない感じでやってくれよ!」と檄を飛ばしているかもしれない。
他のメンバーは2017年の東京JAZZ公演にも同行した面々で、もはやハービーのソウル・ブラザーという印象も受ける。西アフリカ・ベナン共和国出身のギター奏者リオーネル・ルエケ(挾間美帆の傑作『ダンサー・イン・ノーホエア』にも参加)、ベース奏者ジェームズ・ジーナス(小曽根真ザ・トリオの一員でもある)、アルト・サックスとキーボードを兼ねるテラス・マーティン(ヒップホップの名プロデューサーにして、チャーリー・パーカーやジャッキー・マクリーンを信奉)。ジャズを拡張する才人たちが、“NHK交響楽団のホームグラウンド”NHKホールで繰り広げる、あまりにも特別なアニヴァーサリー・ステージをしかと目撃しようではないか。
TEXT BY 原田和典