東京JAZZ 2002
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ハワード・ベーカー
Mr. Baker

ジャズは「アメリカのクラシック音楽」とよく言われてきました。音楽のガンボ(南部特有のスープ料理)ともいえるジャズは、100年ほど前にまずニューオリンズで作り上げられ、まもなくカンサス・シティとシカゴに伝わった後、ニューヨークとロスアンジェルスへと広がりました。近年、パリから東京、そしてリオデジャネイロからサンフランシスコまで各地で、ファンがジャズのテイストを味わい、サウンドを楽しんできました。
アメリカのジャズプレーヤー達は、日本のジャズファンは世界一だと認識しています。おなじみのスタンダードナンバーの再演であれ、サウンドの新たな面を探るような素晴らしい即興であれ、日本の聴衆が彼らの演奏を高く評価してくれることを、ジャズプレーヤー達は知っています。日本は、多くのジャズグループにとって常に訪れる国になっていますし、自分の故郷からは離れたこの日本を本拠地として活動しているアメリカ人ミュージシャン達もいます。
「東京JAZZ2002」には米国や日本をはじめほかの国々の優れたプレーヤー達が出演します。その顔ぶれはジャズの国際性を、そしてニューオリンズ生まれのガンボ、つまりジャズを、新たに、また味わい豊かにする多くの文化的要素を反映しています。
このアメリカの音楽を東京に紹介しようと努力を重ねているNHK及び関係者の皆様をご支援することは私の喜びとするところであり、同時に主催者の皆様にそのご成功をお祈りいたします。ジャズが、それが「クール」であれ「ホット」であれ、東京の夏にさわやかな風を吹き込んでくれるだろうと確信しています。



駐日米国大使
ハワード・H・ベーカー


岩浪 洋三
いまやジャズの世界でもっともアクティブな活動をみせ、ジャズ界をリードしているのはハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、マイケル・ブレッカーの3人であろう。この3人が一堂に会し、華々しいプレイをくりひろげてくれるのだから、今年世界でもっとも注目すべきジャズ・フェスティバルになることは間違いあるまい。しかも注目されるヨーロッパからもユニークなニルス・ペッター・モルヴェルも参加し、日本からも小林 桂や熱帯ジャズ楽団も加わるので、インターナショナルなジャズ祭になるのも楽しみだ。それにハービーがプロデューサーとして腕をふるうので構成もしっかりしたものになるだろうし、今夏は日本から21世紀にふさわしい、新しくて創造的なジャズが世界に向けて発信されるはずだ。それはきっとわれわれの想像を超えた魂をゆるがすパワフルでスリルにあふれたジャズになるであろう。それに立ち会える喜びをたっぷりと味わいたいものだ。



高木 信哉
ハービー・ハンコックの魅力は、ノン・カテゴリーで音楽や楽器に既成概念がないことだ。ガーシュインに新しい風を吹き込み、プリンスやシャーデーをジャズに変えてきた。音楽シーンでは、ハービーは当代屈指の電子楽器の使い手でもあるが、生ピアノでインプロヴィゼーションを繰り広げる。7歳からピアノを始めたハービーは、「僕の指はピアノと結婚しているようなもの」と語る。そして彼の演奏の素晴らしさは、特にライブで発揮される。昨年も、『フューチャー2フューチャー』のワールド・ツアー、マイルス・デイビス&ジョン・コルトレーンの生誕75周年トリビュート・ツアーで、世界中を熱狂させた。ハービーの好きなコンピューター用語は、“ハイ・レゾリューション(高解像度)”だ。音楽プロデューサーのハービーは、アイディア・マンだし、多彩な絵の具(出演者達)を使って、一体どんなハイ・レゾリューションの絵を描くのか『東京JAZZ』が、実に楽しみである。



内藤 遊人
「自由でオープンな感じがほしかったんだ」- ハービー・ハンコックは、最新リーダー・アルバム『フューチャー2フューチャー』発表後のインタヴューでこんな言葉を残している。「僕は他のプロジェクトを手がけるときにも、このオープンな姿勢を常に持ち続けたい」とも語っている。『東京JAZZ 2002』は、そのハンコックが新たに手がけるビッグ・プロジェクト。用意されたスペースが、都心から30分で行くことができるサッカー場の東京スタジアムだということ。60年代マイルス・デイヴィス・バンドや70年代後半のV.S.O.P.ザ・クインテットで幾多の熱い興奮をハンコックとともに残してくれているウェイン・ショーターが参加すること。5月末に発売されたばかりのアルバム『ディレクションズ・イン・ミュージック/ハービー・ハンコック、マイケル・ブレッカー、ロイ・ハーグローヴ』で見事なライヴ演奏を披露してくれているマイケル・ブレッカーもやってくること……。「自由でオープン」をキーワードとする熱いコンサートが、東京から世界へと発信されることを期待したい。



ピーター・バラカン
「ジャズ」という言葉で何を指すか、段々分からなくなってきました。時代と国によってその特徴があまりにも異るので時々語りにくい感じがしますが、基本的に頭と肉体の両方に刺激を与える音楽がジャズではないかと思っています。生まれた頃のジャズが庶民のダンス・ミュージックだったことを忘れてはなりませんね。元々アメリカの音楽であることは言うまでもないのですが、今や世界のどこへ行ってもアメリカのジャズをその国なりに応用した新たなスタイルが揃っています。最近ぼくが考えるジャズの一番面白い作品はパリで活躍するヴェトナム人やマリ人などによるものだったり、あるいはカサンドラ・ウィルソンのように意外なレパートリーや楽器編成を使っていたりします。この第一回の『東京JAZZ』では、安心して聴きに行ける名前が並んでいるわけですが、今後の展開として期待したいのは、ジャズの半歩先を行く冒険心です。



松永 尚久
現在のポピュラーミュージックはよりマニアックに細分化され、ロック、R&B、テクノ....いろんなジャンルが混在し、それぞれが独自のグルーヴ性を確立している。それに伴い、多くの人が同様のグルーヴ感を共有することは難しくなっている。確かに、それぞれのジャンルをわかる人たちだけで楽しむものよいが、時には一つの大木のなかでいろんな音楽嗜好を持つ人たちが集い、それぞれの音楽の素晴らしさを披露(コミニュケーション)しあう機会も大事なのでは?と思う。だが、そんな大木のような容量を今のロックやR&B、ましてヒップホップは持っているだろうか?ポピュラーミュージックのルーツといわれるジャズにもう一度力をゆだねてみるのもいいのではないか。ジャズには泣かせ、聴かせドコロはもちろん、タテ揺れ、ヨコ揺れ.....何だって呑み込んでくれる変幻自在なリズムがある。大人のためだけのもの、と敬遠するのはもったいない。『東京JAZZ』ではきっとあらゆるグルーヴの格闘戦が、数多く繰り広げられる。まさにバーリトゥドマッチだ。さらにそれらがタッグを組んで、われわれの五感に闘いを挑む。『東京JAZZ』に期待する、新しい音楽フェスティバルのスタンダードを東京で創って欲しい。



悠 雅彦
現在進行形のジャズをダイナミックに写し出すイベントが、ちょうど10年の空白を経て東京で開催されることになった。年々歳々、ジャズは進化する。誕生以来100年の歴史を刻んだアメリカ文化としてのジャズが、急速かつ多様な発展を遂げて国際化した今日、いかなる進化の道を歩もうとしているのか、またどのような未来を切り開こうとしているのか。この『東京JAZZ』から世界に向けて発信されるジャズを通して、人はそこに、過去と未来のジャズを結ぶ礎となるべき”いま”を発見することになるはずだ。かくして、『東京JAZZ』は多様な側面を呑み込んで進化を続ける今日のジャズの熱い最前線を体験する野心的な場となる。それがどんな形で提示されるのか。最初のアート・ディレクターに指名されたハービー・ハンコックの手腕がけだし注目の的となるだろう。『東京JAZZ』は、このジャズ文化を次世代にどう伝え、どう受け渡していくかを問われる試みでもあり、このイベントが担う役割と使命はすこぶる大きい。




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